小林賢太郎の作るお話は、大半シュールで、少しバカバカしくて、時々まじめ。
たまに思いが強すぎて、深すぎて伝わらないこともあるけれど、今作は誰が観ても楽しめる普遍さがある、夢がある。
「うるうびと」、それはうるう年のうるう日のように、どこでも、誰と何をしても、1人余ってしまう世界から取り残された存在。彼はつながりを諦め、人知れず森に暮らす。1人でいることが宿命だと考えて。
あるとき、彼が仕掛けた獲物取りの落とし穴に、1人の少年が落ちる。彼は少年を助ける。
少年は彼に興味を持ち、友達になりたいという。彼は困惑する。自分は1人だ、寂しくなんかないと。
はじめは、「少年マジル」を遠ざけようとしていた「うるうびと」が、少年と話し、少年を知り、心を動かされ、自分について語り出す。しかし、彼には1人で生きざるを得ない秘密があった。
そんな、一見よくあるような物語が、小林賢太郎の独特の調子によって展開していく。(特にドクダミの件はとても笑わせてもらった。)
でも「うるうびと」が自分の過去を語り出し、「少年マジル」に秘密を告げようとするあたりから、急激に物語はシリアスな展開をみせる。目を離せなくなる。こみ上げてくる。
そしてクライマックスは、、、
とても良い意味で期待を裏切られた。まさか、お芝居で涙をこらえることになるとは。
とにかく、生で観れて良かった。
気持ちよく劇場を後にした。
きっとDVDも買うな。
作品情報
製作年 :日本(2012年)
作 :小林賢太郎
演出 :小林賢太郎
出演 :小林賢太郎
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